Cucina Stellata · 物語と手紙
料理人の日記、3通の隠された手紙、最後の便りを読む。物語の内容は最初は折りたたまれている。

物語と終盤の内容を表示
3つの引き出しの手紙には、料理人の語る過去とは異なる姿が記されている。すべて開けると、終幕の場面の後にステラの手紙が追加される。
人物と声
料理人
並外れた味を追い求め、膨らみ続ける食欲を日記に記す料理人。隠された手紙からは、職場や家族との激しい対立が見えてくる。
ステラ
最後の手紙を書いた人物。彼に傷つけられたこと、助けられると願っていたこと、そして一緒には進めなくなったことを語る。
預言者の声
料理人の飢えに語りかけ、自分のために歌う詩人について話す声。4つの文章が筆記パズルに合わせて現れる。
該当する項目はありません。
日記 01
人は言う。好奇心は危うき罠にして、二度と浮かび上がれぬ深淵へと誘うもの。だが、こうした言葉を口にするのは、食の肝要を認めぬ偽善の世に他ならない。現に、世俗であれ宗教であれ、布が敷かれ、人が存分に貪ろうとせぬ饗宴など存在しないのだから。
故に、私は言う。材料は常に最上のものを選び、己の価値を示すべし。そして、この貴き果実、由来も定かならないが、見立て通りに希少ならば、トリュフに勝るとも劣らぬ値を持とう。
だが、希望と情熱には慎みを持たねばならない。秘めたる祈りのうちには、すでに未来の悲嘆が芽生えているのだから。神の恩寵が引き裂かれる様を目にするのは実に忌まわしいが、この嗜好と食欲はあまりに強い。
日記 02
このような晩餐は、竈においても味覚においても、私を一介の見習いへ引き戻す。
その卓越と美味のみならず、驚愕と夢の成就をも思い知らせる。最後の一口を呑み込んだ後には、我が身の所在すら定かならない。椅子は消え、食器は失われ、閉じた瞼の闇の内、視線が紡ぐ色彩に心奪われる。かくも強き陶酔は、あらゆる好奇を満たす労苦に値し、再び火と竈を奮い立たせ、作業へと戻り、深海に臨む潜水夫の如く、愛する善と美の探求に身を投じずにはいられない。
常々、私は言う。食とは、腹が切に救いを求めるときにのみ、立ち返るべきもの。だが、私は生来、ほとんど御しがたい情欲を宿しており、故に健康も、他の全てをも破滅しかけた。さらに言おう。人が食を欲せず、性の衝動を覚えねば、たちまち滅亡するであろう。
故に、私は再びここに立つ。鍋も、釜も、蓋も、脚を開くがいい。下草の香りよ、ソフリットと三つ編みニンニクよ、私はすでに、お前たちの間に戻ってきたのだ。
日記 03
待ち焦がれ身を震わせ、逸る指を辛うじて御している。指は片時も休まず口髭を弄び、掠めた味の残滓を、なお塗り広げんとする。
甘くも、苦くも、酸っぱくも、塩辛くもない。いや、そもそも味ですらないのやもしれない。これは、一種の感覚。口から喉へ忍び入る蠱惑的な震え。ぬめりを帯び、名状しがたい何かが、その跡に苛烈な残響を、決して消えぬ後味を残してゆく。
描写する術はない。定める言葉が存在しないのだから。
日記 04
またもや、吐息する臓腑の如く彼方の光が脈打っている。両手は恍惚に囚われ、もはや何一つ縋るところを求めない。
夢から醒めたように我に返ると、舌が歯の間をさまよっている。歯は古代の廃墟、その間隙で舌は人の味覚には未知なる秘宝を探している。堪能する望みすら持ち得なかった味を。この世のいかなる味蕾にも宿らぬ影。そして喰らえば、あちらもまた、対をなすように私の内なる何かを喰らう。
他の食材までもが病み、傍らにあるだけで汚染され、味と同じく捻れた実を結ぶ。口にしようとする者など、誰もいまい。ただし、伝統料理の課す教義から己を解き放ち、この世ならぬ味を独り貪ろうとする者を除いては。画家が新たな色彩、あるいは戦慄すべき新たな色調を発見するにも似る。あたかも、とうの昔から実在したかのように姿を現す。ただ、黒ずみ、萎縮し、驚異に不慣れで衝撃への備えもない我らの虹彩、その片隅に見捨てられていたのだ。
日記 05
かつて、スープは人の飼葉と言われたものだ。だがこれは、むしろ天使と悪魔、人食い鬼とマザペグル、マガラッシとマルマクレ、霊や神話に棲むものどもの飼葉らしい。
胃が歯軋りし、獣の食餌を寄越せと猛然と迫る。太古より続く飢えの呼び声に耳を澄ませば、その一語一語までもを聞き分けられる。今や口蓋、今や大腸、今や酸液の波を湛えた胆汁そのもの。そして喚き立てる味蕾までもが、甲高く刺すような澄んだ音を歌っている。
悦楽が去るにつれ、ああ、腸の深奥から凄まじき衝迫が渦巻いてせり上がる。かくも痙攣じみて猛烈な勢いに、肉の激情と暴威に支配された野蛮なる原始の獣どもにさえ、理解と憐憫を覚えるほどに。
日記 06
何と味覚の本性には、思いも寄らぬ秘奥の法則が潜んでいるものだ。一口ごとに、全身の繊維という繊維が新たな感覚に囚われ、身を捩り、よじれる。この肉は大地に属さず、この味もまた人の理には属さない。ただ一口、それだけでかくも力を持ち、魂を眩い光輝へと引きずり、あらゆる思考を焼き、打ち砕く。光が近づくほど、他の食べ物は常の美質を失っていく。酒は水となり、パンは灰に変わり、空気にさえ微かな匂いが満ちている。
舌に落ちた影は、何をもってしても洗い流せない。身体そのものが、世界を知覚する新たな術を覚えつつあるかのようだ。歪んだ、禁じられた術を。それでも、この湿った夜の只中、喉は渇き、胃はあまりに早く空になってゆく。何より空恐ろしいのは、我が内の何かがなお、あの味を欲している。
日記 07
何たる災難、何たる凶報。忌まわしき沼地よ、悪臭放つ泥濘よ、揺籃たる不信心の土地よ。己が子らに慈悲一つないというのか。食物を長く健やかに保たせようともせず、よりによって、この甘美で貴重なものまで。豊穣がそれほど疎ましいか。呪ってやる。
どれほどの時間が過ぎたというのか。一時間、二時間、あるいはそれ以上か。だが神に誓って、一夜を越えてはいない。それなのに、もう身体は崩れ、剥がれ、発酵している。肉は泡立つ音を立て、凄絶な腐臭の中で呻いている。そして私は、なお味覚の囚人でありながら、保存など考えもしなかった。どうして考えられただろう。
ああ、今ならよく分かる。この我が家がいかに呪われているか。そして天上から見下ろす神が、いかに憎むべきものか。
日記 08
もはや天運に委ねるほかない。
この変貌も、立ち昇る臭気も、悪臭こそすれ、グラッパやチーズ、熟成した塩漬け肉のように、かえって味を益するものとなればいい。傷んだ食物は、時として思いも寄らぬ妙味を宿すものだ。
日記 09
今度の味見は、夏の真昼を往く道行きとなった。花咲く庭を巡る、混濁し、入り組んだ旅。小径は色彩に満ち、夢の如き芳香を漂わせていた。広大で明るい庭では、我が生涯の全行程が眼前を流れていくようだった。
歯状の蔦が架けるアーチの下に、道は開けていた。光と影の斑を縫いながら、喉の如き峡を下り、枝の開けたところでは、黄金の粘膜の水溜まりへ足を置いた。左手の木々の下には、輪郭も定かならない、咽頭めいた桜草の群れが、絨毯の如く広がっていた。
空気は、肌に柔らかな口づけを落とすようだった。森の深い腹から野鳩の鳴き声が届き、小川の、胃の鳴動にも似た心地よい水音と溶け合う。地面が桜草で埋め尽くされ、消化の攪拌のさなか、踏まずに進むなど到底叶わなかった。
空気の柔らかさと、酵素液を滴らせる緑の枝葉は、ほとんど畏敬の念を抱かせた。やがて、生垣と茂みの間に開いた孔を抜け、庭の外へ出た。汗に濡れ、身なりも乱れ、今しがた母胎から引き出された人間の如く。
日記 10
とうとう、あれも私を見捨てた。あれのせいで、卑しき復讐のせいで、歓喜が時を知らず住まう天上の庭への帰還は禁じられた。
あの幸福な野に別れを告げるなど、受け入れられるものか。こんな形で、今この時に、一度この眼にした後でなど。
それでも、全く新たな力が我が内を流れている。上から下へと流れ、食塊の如く運ばれながら、最も奥深い臓腑へまで入り込んでいく。
どうやら、私自身も変わったらしい。最も単純な答えであり、同時に最も惨めな答えでもある。ならば、私もまたこの輝かしき精髄の一部、ついには最も卑しい糞便に安息を見いだす代謝の鎖、その一環となったと考えて、何の不思議があろう。
日記 11
何たる厄災。酸っぱく、舌を刺すような味。鶏小屋の止まり木さながらに汚れ果て、生来の純粋さなど、もはや色褪せた残影に過ぎない。
薄まるあまり、佳味と美味の精髄は道中で散り失せたのか。あるいは、美質と恩寵は胃へと譲り渡され、全身の肉へ移ったのかもしれない。
ならば、もはや最後の試みに身を委ねるほかない。
日記 12
頬など、存外に大したものではなかったと気付き、我ながら些か驚いている。切り取っても、睫毛がわずかに震え、眼に薄い涙の膜が張っただけだった。それなのに、眼球は乾いた刈株を舐める炎の如く燃え、渇きに焼かれている。炎暑に裂けた大地のように、心の内の一滴まで、落ちるより先に干上がらせてしまった。
かくして私は、天高き太陽をあまりに長く見つめ、夜陰に逃れてなお救われぬ者の如く燃えている。この炎を鎮める涙など、もはやありはしない。
日記 13
力はもはや私を離れつつある。されど、あの一口の栄光のうちに、なお息をしている。
残された時は僅か。余さず使わねばならない。破滅にも増して耐えがたいのは、失われた快楽の記憶なのだから。
頼む。己が絶頂を棄てるよう強いられた者の列に加わるなど、私にはできない、なりたくもない。女としての歓びを知り、後に奪われたテイレシアスのようには。主の恩寵に口づけられながら、堕天したルシファーのようには。知への渇きが、自ら永劫なる責め苦の墓碑銘を書き上げた悲劇のファウスト博士のようには。
神よ、霊よ、悪魔よ、何者であれ、もう一度、命取りの一口を授け給え。我が人生なるこの生温いスープに今一度、一筋の油を垂らし給え。
隠された手紙 01
読むのにも骨が折れたぞ。お前のご立派な文句は、フライパンに浮いた油みたいに濁ってる。
また仕事を恵んでもらいに来たのか。何度ぶん殴られたか忘れたか。仲間はみんなお前が嫌いだ。平手打ちを食らって頬を腫らし、家へ帰った晩も一度や二度じゃなかったろう。それでもわからんとは、殴られても懲りん奴だ。
腕があるのはわかってる。料理は立派に仕上げる。だが頭がちとおかしいし、若旦那みたいに気取る奴はここじゃいらん。蛙みたいにふんぞり返って、仲間の冗談にもなじめず、自分を宮廷料理人だと思ってやがる。芸術家の気まぐれに金を払ってるんじゃない。手に豆を作って畑で働く連中の腹を満たすために払ってるんだ。機嫌が悪くなるたび、これまで何度騒ぎを起こしたことか。麺棒一本がダイナマイトみたいな有様だった。軛に耐えられん奴に、厨房は任せられん。よく覚えとけ。宿屋に必要なのは、孔雀より牛だ。
隠された手紙 02
母上
まだ望みを捨てていないようなので、あえて繰り返しておく。父の葬儀には行かない。たとえどんな償いを約束されようとも行くつもりはない。あの男は私にとって何者でもない。私の中には爪の先ほども、あの男のものなど残っていない。それを主に感謝している。あの男が息を引き取った日も、鍋のスープはいつものように静かに煮立ち、外ではいつもの晩と変わらず風が駆けていた。死んだのは、どこにでもいる一人の男だ。そして、どれほどの悪魔だったか、母上もよく知っているはずだ。あの性悪め。酔いどれで、騒ぎばかり起こし、土くれを踏むほか能のない男の葬式など、泣きたい者が泣けばよい。私は加わらない。
いや、さらに言おう。あの日は私にとって、聖ルフィッロの日よりもめでたい日となる。ようやく我が家に、私も口を挟めるようになるのだから。父は何の値打ちもないくせに、納屋の家畜のように家を食い物にしてきた。私なら、あそこから小さな宝石のような家を作り上げてみせたものを。なのに、荷をまとめ、この身一つで出ていかねばならなかったのは私のほうだ。
あの家を取り戻す。それが復讐となる。もっとも、本当は梁も思い出も残らぬほど焼き尽くしておくべきだったのかもしれない。物乞いか、名もない者のように私を捨てた、その仕打ちと釣り合わせるために。あなたたちは私を無理やり息子にした。だが一人前の男には、私一人でならねばならなかった。今さら泣いて慈悲を乞われても困る。そんなものが何なのか、私は知らない。
どうぞお達者で。死者は蛆虫とともにあれ。
いずれまた。
隠された手紙 03
義弟へ
お前を思うだけでも胸が悪くなるが、またこうして手紙を書かねばならない。
図々しさゆえか、恥というものをまるで知らぬせいか、どちらでもいい。他人の家で主人のように喚き散らし、鎖でも振り回すように言葉をぶつけたのは、大きな過ちだった。そして、それが最後だ。私はもとより喧嘩好きでも短気でもない。だが大切な者が侮辱されれば、血は火となり、心は獣にもなる。
すでに警告された身でありながら、まだ自分には権利があるなどと喚いている。だが女は、戸棚の瓶や杭につないだ家畜のように、所有できる物ではない。
穏やかな情愛をことごとく踏みにじり、生きる苦さをその杯へ注ぎ、眠りさえ奪って、それでもまだ足りないというのか。今度も悔いて戻ったのではない。ただ、手から逃れたものを欲しているだけだ。自分の噛み跡で腐らせた骨を返せと吠える犬のように。
だが、これだけは覚えておけ。私は聖人でも殉教者でもない。もしまた戻ろうなどと企てたなら、お前の前に立つのはもはや人間ではなく、狙いを定めた銃口だ。前に、お前の姿が戸口を汚したとき、鉛玉を浴びせなかったのは過ちだったのかもしれない。この疑いが、疑いのままであるよう祈ることだ。もし答えがはっきりしてしまえば、お前がまた探しに来るのを待ちはしない。私のほうから行く。お前の朽ちかけた家がどこにあるかは、よくよく知っている。
預言者の言葉 01
独り離れて座し、我が賜物の残す軌跡を見据えよ。
恵みは音もなく降り、輝き、宴を前に豚どもを肥やす。
愛するは、鼻を鳴らし底なき渦へ疾く身を投じ、泣き声と笑い声の絶え間なき移ろいを顧みぬ者。
預言者の言葉 02
最古の律に従え。飢餓と陶酔の律に。
古き罪を振り返るな。ここは、甘き帝国と大いなる食欲の王のもと。
ただ悔恨のみ鎮める者と、我を呼べ。
ここでは誰も咎めぬ。汝の肥えた頬も、向こう見ずな情欲に膨らむ喉も。
預言者の言葉 03
命を盗む者、騙る者、虚言なす者と我を呼べ。
汝が最も愛した声、星降る夜を彩った声で語る我を聞け。
鼻孔を開き、巣穴より漏れ出して人を苛む瘴気を迎え入れよ。
その毒は至るところに新たな道を穿ち、
初めの林檎に巣食う初めの虫が如く、心の果肉へ食い入る。
預言者の言葉 04
果てなく荒涼たる倦怠の野で、我は汝らの歩みと、決して癒えぬ渇きを追ってきた。
溝の闇と孤独な夜の底で、快楽の泡が輝くを見た。
膨らみ、殖え、無限を心奥の隙間へ押し込める、あの渇望を。
ついに我が声は、我が神秘を歌う者を見いだした。夜を探り、最も貪欲なる獲物を見いだす者を。
最後の手紙
愛しいあなた。こんな風にならなければよかったのに。
あなたには、特別なものがあった。知ってた?
でも、自分は間違ってるんだって思わされた。
最後には、自分でもそう信じるようになって、変わっていった。
あんなあなたを見るのはつらかった。怒りっぽくて、乱暴で。
私のことも傷つけた。覚えてる?
あなたを救えると思ってた。でも、間違ってた。
でも、あなたを笑いものにして、ひどいことを言ったあの人たちだって間違ってる。
あの人たちは今も、あなたの名前を持ち出す。自分たちのほうが立派だと思いたくて。
でも、悪かったのはあなただけじゃない。
最後まで願ってた。でも、あなたと一緒にあそこまで降りていけなかった。
暗すぎたから。分かってくれるといいけれど。
でも今夜は、いつもより空が澄んでいる。
戻るべきじゃないのかもしれない。でも、戻りたい。
ずっといるつもりじゃない。心配しないで。
あなたの料理や書きものの時間を奪ったりしないから。
戻ったら伝える。あなたを見ていたことを、できるだけ長く手を握っていたことを。
それから、よかったら、あなたが書いたものを何か読んでちょうだい。
そしたら、お別れ。
あなたの
ステラ
© Filthy Eden